サルベージ

最初は、結局書き込まなかったコメントから(hokke-ookamiさんのエントリ

こんにちは
法律知らずのミステリファンの自分は、弁護士は代言士、決定権を持つ被告の言を法律用語に翻訳するのが仕事という捉え方です(Hired-Gunとまでは割り切れないけど) 弁護士の「正義」とは法廷内の正義の実現で、適正な裁判の進行への寄与が第一義だと考えています リンドバーグ事件が未だに謎とされるのも、被告の主張に取り合わず弁護人が有罪と先決したせいじゃないかなと 審判での精神鑑定がすべて刑事処分からの逃避だと非難されるのも門外漢には不可解な事情の一つです 医療措置の必要性を問われずに収監された人物が、どれほど荒廃し(心理専門職員が配置されていない施設ではスクリーニングも不完全と思われます)、出所後はどうなるのだろうかと(起訴不起訴の是非以前に、受け入れる精神医療施設の払底という社会問題でもありますが)
弁護士物はあまり好みではなく読み込んだジャンルではないけれど、キャラ的にやり手の小悪党タイプやヒロイックな探偵タイプは一時代前の扱いという印象です(職業人としての弁護士像は廃れてはいませんが) 2005年の年間ベストミステリに収録されたジョージ・V・ヒギンズ「弁護士ジャック・ダガン」は、正邪に無感動な法曹界の日常を淡々と描き、真実一路でも守銭奴でもない弁護士を登場させました 重犯罪刑務所の探訪ルポも書いたジョイス・C・オーツが幾度も読み返し、賞賛したという代物です
触法概念の撤廃、あるいは、「野犬に人権はない」で済ませてしまえるなら、現実も物語のキャラ設定も簡単なのでしょうけどね

で、実際にコメントさせてもらったのがコレ

D『こんにちは 件の弁護士は「空気を読む」だけの人に思われてしかたありません
>タレント活動を続けられるのだろうか
テレビ界の「よいタブー・わるいタブー」を彼は心得ています 職業倫理を犠牲にしてまで現在のテレビ界の強者である芸人たちを遇する限りは(さんまは鼻白んだようでしたが)淘汰もされず業界では安泰なのではと
 ODA云々で自ら降板を申し出たのも、この程度のタブー破りでタレント本人に放送中に訂正を求める「風」を読めないTBSなど、こちらから見切ってやるという空気読みの自負があったのかもです(発言後も他局のレギュラーは増えましたし)
たかじん田原総一朗と対談した時、タブーに挑戦する東西の両司会者という腹づもりが、「(総連や同盟を取り上げる事はできても)例えばトヨタのリコール問題はテレビではできない」と田原に梯子を外され、苦々しい顔をしていたのも思い出します 政局好きの陰謀論製造機などと揶揄される田原ですが、「放送タブーに挑戦」といった不誠実なキャッチはさすがに恥ずかしかったのでしょうね』 (2007/09/08 18:40)

コレ

D『「普通」の人々が披瀝する裁判制度や刑事弁護の解釈に、殺人者の奇妙な論理以上に驚愕した法曹人は少なくないのでは、と考えてしまいます
今枝弁護士は「話せばわかる」の性善説の闘士という印象なのですが、やはり被告の利益を第一に考える立場であるならば、他の弁護士ブログに経緯を書くぐらいに止めておくべきだったのかなと コメントスクラムに対する認識も当初充分ではなかったですし、開設前に小倉秀夫さんあたりが、残念ながら日本のネット環境はこの種の議論には不向きなのだと助言してあげていればなとも思いました (一般論として刑事弁護に理解を求める目的があったとしても)対検察の関係で均衡であっても、読者が被害者の代弁者として立てば、バランスも議論もいびつに流されるのは避けられず、また、期せずして依頼人が状況証拠にもならぬ印象論だけで進められる民衆法廷で裁かれる事態に陥るやもしれません 触法概念や情状を無価値とし、事件の判決に知人に宛てた私信を唯一無二とする人が集合するわけです
命をもって償うと述べなければ謝罪とは目せぬという人々の主張は弁護人としても辛いでしょう 仮にそうなっても、検察側との争点は押し流され、死を望む被告に死刑を回避する弁護活動をしているという懲戒を視野に入れた非難の声が上がる事でしょう 長文失礼しました』 (2007/09/22 10:09)

で、自粛分がコレ

自分には守秘義務もなく、裁判の進行、容疑者、被害者に対して何らの責務を負う立場にありません 沈痛な供述書を精読する務めも説明責任もありませんから、「弁護側の主張によって深く傷ついている人がいることをどう思うのか?」と難詰されても、「刑事弁護に対する認識のちがい 現行のシステムに問題があると思うなら、弁護士ではなく、法相に陳情するなり、立法府の議員に働きかけるべきじゃ?」と返答し放置できます また、「法治国家の概念に違和感があるのでしたら、政治家ではなく、運動家、革命家に接触するのが早道かもです」といった軽口も叩けます これは啓発に励む弁護士であっても可能な態度でしょうが、弁護人として公判中の今枝さんは許されない状況にあると考えます 被告人と同一視して弁護人を非難する社会では、弁護人の振る舞いに対する反感が被告に転嫁される懸念があるからです 刺激を受け喚起された世論に、判決が影響される危惧があるからです 多忙で制約のある当事者の議論参加は、やはり慎重であってほしかった 検察への追撃が法廷戦術として「大失敗」であったとお考えになるなら、国民に理解を求める「赤裸々な」心情を吐露する一文が、意に反し引きずり込まれたとはいえ、ネット(裁判)於いても失態になりかねないからです(「単純にメディアリテラシーの問題でいけば・・・議論で負けても、イメージ合戦や動員ゲームで圧勝です」

ぐだぐだ雑感でこれほど長文を書き記すのは、アラシと変わらないですよね