こりあんさん


 北杜夫は小学生の頃のアイドルの一人 人工的な筆名のくせにまことに人間くさい、だらしない大人生活を満喫しているこの作家に憧れていた 暇な時は著作を詰め込んだ専用のダンボールに手を入れ、あてずっぽうに引っ張り出した本の数ページをめくった ケストナーやシャーウッド・アンダスン、ジェローム・K・ジェロームを読んだきっかけは彼のエッセイから 遠藤周作の名を知ったのもそう どくとるマンボウと並び称される狐狸庵シリーズの前哨戦として、近所の小さな本屋(二坪あったのかなあ)で軽く読めそうなのを物色した 文庫がぎゅうぎゅうに押し込まれた書架、すぐ近くにフィリップ・ロスの本が並んでいたのをいまだに覚えている 「乳房」つながりで一緒に買おうかとも考えたが、中学生は店主の視線に耐える度胸を持たず、遠藤の小説だけ購入した ロスは現在入手困難らしく惜しいことをしたと思っている 肝心の遠藤周作はしかめっ面なユーモアが自分には合わないと決め込み、結局この一冊きりとなった 『沈黙』までたどり着けずに終わったわけです 中学の級友が『沈黙』は人生で最高の本になると言ってくれたのも懐かしい思い出
 判断にはある書評も与っていた 小説のなかで機動隊とやりやっていた学生が何かのトラブル(犬に襲われるとか見物人に殴られるとかそんなの 忘れた)に巻き込まれ敵対していた警察に助けを求めるというギャグがある 「面白おかしくもない」とまでは言わぬが、まあ特になんていうこともないシーン だがこの笑いをすごく褒めている一文に出くわした 遠藤ユーモアの真骨頂という感じで取り上げている こういうのを面白がる人が読む本なんだなあと思い、狐狸庵敬遠してしまったのです ある作家が「寝る前にしっかりしめよう●の首」のギャクに学生の頃腹を抱えて笑ったと書いていて、自分はまずこの人の書いた物は読まないなーと思ったけれど(別に潔癖症じゃないのよ どつき漫才もズレたエスプリ風も昔から嫌いだっただけ)、本人ではなく第三者の言質で一人の作家の世界丸ごと遠ざけてしまった事には悔いが残ってるかな

 外務審議官への脅迫事件で、シニカルに世の中の真理を暴き出してやるといった興でこのどーしようもないギャグを使う知事が現れたのには呆れた この男に暴言を吐かれた双子タレントの一人は蔵書を全部捨てたという話だが、自分はそもそも一冊も読んでないので、いらぬ手間を掛けずに済んだ おっほっほ
「経済学部生並びにボート部、浄土宗徒お断り」の張り紙がしてあるラーメン屋(オーナーは日本人は憲法は権利ばかりで義務がないと高説を垂れながら、前の通りを役所に整備させ、市営バスの停留所を引き寄せ、住民税なんとかならんかと掛け合う人物)の社会性についてはひとまず 「企業コンプライアンス(良き社員にとどまらない良き市民としての自覚うんぬん)<顧客の利益」という私意に理解を示すならば、当然その後に続く「<自社の利益」まで目を向けなくちゃならない
 これは困った 従業員とその家族の生活を慮り軍部との協和を図った朝日社員の過去を問えなくなる(株式非公開、再販制度に守られた新聞社を市民ホールと等しい公共財とする法規があるのなら失敬)
 西武グループは日清と同じある種の「聖域」と勝手に考えていたから意外でした 「ご時勢だし、そんな扱いも今後は考え直さなきゃいけませんなあ」なる声が頭の中で囁いたのかもしれないが 昔ワイドショーでサチヨ夫人の講演会場に街宣がきて「ものものしい」警備が引かれたという話題が取り上げられた スタジオの有田芳生は「こんな騒ぎを起こしてまで講演をする必要があるのか」とコメント 発言自体は番組レギュラーとして(更に言えばジャーナリストとしても)筋の通らない意見とは考えない 引っかかったのは、こんな仕事をしていたにもかかわらず有田が政治家を志した事だ もし糾されても(政治家が警察、軍に準じるコントロール不能の力の存在を是認したなら大変だ)、タレントトークなる弁明を用いるつもりだったのか、入院した西村顧問への取材を見、右翼タブーをマスコミは深く追求しないと踏んだのだろうか
 話を戻すと、雪祭りからの撤収に言及し問題になった師団長もいた 自衛隊に反対するやつは災害救助でも隊を当てにするなという人もいる そういう人にはこれも一流のギャグ、あるいは箴言となるのかしらん


 組合側のかつての市民的不服従を論う意見もある 自分がこの件にコミットする場合、構えは三通り考えられる
 1 法令、判決を疎んずるいかなる言動をも厳しく批判していく気組み もはや神の姿が見当たらない当代は何人も法の下にあれ 旅券を見せろ、矜持をもってその杯を干せ 
 2 あくまでも司法、現行法からの判断、留保であり、判決、要請等をもって異論を排除する態度は堅く慎む 神と神学者のゲーム規則には支配されない 杯を置きたまえ、そんなもの驢馬にくれてやれ
 3 ケース‐バイ‐ケース 私は形式ばるタイプじゃないし、1ビット脳でもないよ 気持ちの良い朝には神の衣ずれの旋法に触れたことさへある うーむ、彼の愁訴は他に――別に心因があったのでない? 奥さんが怖かったとか弟子との確執とかさ
 おたくはどれ? あら、委員長と一緒なのすね 


 ブログ寒冷地をよいことに、今回は振り切ってみた



 この項は以下の作品をちょっぴり参考にしています
『白い人』遠藤周作
『雪の中の三人男』エーリッヒ・ケストナー 北のエッセイでは泣き顔の百万長者(貧乏が恥なんじゃないか!)と澄ましたホテルマンのやり取りが引用されている
『エマニエル夫人』ジュスト・ジャカン監督 世界人気ランキングNO.1ホテルも登場(窮屈な機内とは別世界の開放感! 現地アジア人の目は木彫りなので、きまりわるさを感じないと評判です!)
『人として』海援隊