テンプラス


 周回遅れでやってきたくせに、ぐだぐだして会場からてんで立ち去る気配がありません ちびちびと残り酒をすすり、ホストに嫌がられるタイプ そう、あと二回続くのですよ付1)
 やはり世十大の真面目をこなしておかねばと十大SFを二、三日思案したのですが、かなたよければこなたがアレで、どうしたってすっきり決まらない 中短編に絞ってみるも増して収拾がつかず、ならばとジャンルをミステリに変更しても無理、ええいと話題に便乗して「ノックス十戒破り十編」付2)を考えたのですが、スルーではなく意識して書かれた作品となると容易く思いつかず、『ビンゴ教授の嗅ぎ薬』(直に意識したのはクリスティだろうけど)、『二重像』、『執事クラブ始末』で止まってしまった で、繊細かつ深遠なる折衷案により、中短編のSF密室編を(ナニヨソレ?)

SF10〜密室編

『すべての夏をこの一日に』レイ・ブラッドベリ
 ※二十歳位に読み返した時の方が響いた 登場人物らと大差ない年の頃に読んでいたせいかもです

『模擬砲』フレデリック・ポール&C・M・コーンブルース
 ※もし「いちばんカッコイイ短編は何だった?」と訊かれたら、ティプトリーでもビートやサイバーパンクの作品群でもなく、この一編を挙げるです

『リスの檻』トーマス・M・ディッシュ
 ※好き嫌いの分かれる作家だと思う(実を言えば自分もちょっと鼻につく) だけど、このテーマなら外せない作品と思った 

『シルヴェスターの復讐』ヴァンス・アーンダール
 ※科学者(♀)の歌声が今も「耳」に離れない

『青をこころに、一、二と数えよ』コードウェイナー・スミス
 ※スミスの原稿から編集者時代のF・ポールが採用した硬質のタイトルで一際クールに

『たとえ世界を失っても』シオドア・スタージョン
 ※「密室物」の趣向ではちと弱いが、希少価値のある作品らしいので シェクリイの『家畜輸送船』と迷った自分はひどいやつなのかもです

『主観性』ノーマン・スピンラッド
 ※「行けるとこまでガンバッテみよう」 スピンラッドは才人というか、いささか近寄りがたい、とても大人な印象の人だった

『凍った旅』フィリップ・K・ディック
 ※苦闘の生涯に於ける短いけれど心安らかな期間にものにした「ビター」(浅倉久志)な一編 『ヴァリス』とは別口の――『火星のタイム・スリップ』を書いたディックの系譜に仕分けしとります 作家の短編中最良の一つ 

『宇宙船ジョン・B号の謎』フランク・M・ロビンスン
 ※ソフトサイエンスもまたSFの王道(悪い意味でなく)

『船を見ぬ島』L・E・スミス
 ※これは怖かったなあ 鬱蒼なコンラッドも読んでみようかなうときっかけもくれた

 リストは「密室」の狭→広の順で並べてみました 宇宙船については居室スペースや船倉のサイズがはっきりしないのでちょといい加減 それに視点を変えてみればブラットベリの作品、封された空間はL・E・スミスの孤島より遥かに広大となるわけですね
 超弩級の『冷たい方程式』はやっぱり入れたかったな ハインラインの『金魚鉢』も 「方程式」とかハインラインの名を久々につぶやくと果たして胸が痛む 遠くなりにけりだわね いつかまた再読できればいいなー


付記1:最後の三本目のエントリはダメダメ本十冊にしようかなーと
付記2:ロナルド・ノックスに関しては苦い思い出があり、代表作とされる『陸橋殺人事件』が中学の時に中途で放り出したままになっている(たぶんこの先も読めないw) 『探偵小説十戒/幻の探偵小説コレクション』は図書館で借り、読了している筈なのだが、中身はなぜかまったく記憶に残っていない(収録作を調べてもさっぱり思い出せぬ) 意味深なドレスの女がテーブルに近づき、謎の言葉を伝えるなんてプロットの小説がいかにつまらないかと綴る「序文」は覚えていたのにさ 『ノックス師に捧げる10の犯罪』も同様 というか、こちらの方はタイトルすらあやふやだった 借りた本だったから読み飛ばしちゃったのだろうね あらら



追記(11月15日)
 うーん、酩酊している間にとうに会はお開きになってたみたい idiotapeさんさまざまあったんですね 卑しい酔っぱらいはこうして醜態を晒す羽目になる 面目ない またいつか「世十本」タグつけて欲しかったな
 当のエントリは、たどり着くまでに散々な書評を読んできたからか、恋愛小説と漫画に疎く免疫がなかったせいなのか、自分は過不足なくすんなり読めた エリスンが自作の小説に組み込むようなエピソード とにかく、紫の蛍光ペンで彩色した海豚とは映らなかった 打ち明けてしまえば、この一年ネットで読んだものでは最も感じ入った文章でした
 でもブログの日誌で、この内容で劣化版とされるなら、文壇は柴田元幸が黄色い悲鳴を上げ続け、評者高橋源一郎はかぅかぅの仮面をかなぐり捨てて憤死する水準にあるんだと想見したのですが、やはりJ-POPの派生にもネットにも親しくない故の失当でしょうか 自分、いろんなトコが弱ってきてんのかなあって、暫く愕然としておりました