15日後


 二週間が過ぎた 世論は平常運転に戻ったのかもしれぬ(朝生は見なかったが) 物量に勝る攻勢隊はすさまじく、消費税率アップは法人税増とセットが常道との論調が一夜でひっくり返った解説者もいたぐらいだからね 自民谷垣党首のエネルギー政策転換への言及がピーク(徒花、両端から燃える蝋燭の一瞬の)だったのかも 原子力安全委の長を務めた男が耐震指針の改訂は「産業界の圧力」で潰されたと証言したそうだ 一山幾らのニュースだが、「ええ」と大仰に驚いてみせる善男善女も現れるだろう――刮目すべきニュース、暗澹たるニュースはむしろこっち
 顧みれば、終戦日記になってるのかな、これ

 ブクマ以下、以上のものを記しておく 五十年後にアメリカ合衆国中西部、片田舎に住むクリストファー少年が、興味深く読んでくれる未来なんて絶対に、徹頭徹尾ない――「絶対」はこう使う


「圧力逃がし弁ですか? 必要ないでしょう」
「住民参加の避難訓練? 面倒事が増えるだけでわ」
ディーゼルが同時にダウンする可能性? メルヘンに解答するのは……」
「外部施設点検簿の記載ミス? 自主点検項目ですからねえ」
「ECCSのデータ改竄? もちろん遺憾です、反省してます。ただ、これは寛大な処分と引き換えに得た情報でして……」
 業界の杜撰な査定、想定が、何に支えられてきたかよく理解できるリンク
 ガルの値が額面通りならば、今回の揺れは設定内に収まったものの、津波によるブラックアウト――その津波の想定値が「5.5メートル」 6メートルの大津波の記録を紐解くまでもなく、10メートルクラスでも1000に1の頻度ではすまない また、阪神淡路大地震以後、地震学者、地質学者ら学会の総意が、現在が静穏期を抜けた大地震の活動期と見ていたのは相違なく、ゆえに国会で警笛が鳴らされ、文科省地震防災対策の冊子に貞観の史料が引かれているわけだ 「千年に一度」の天変地異が群発した九世紀に例える認識も決して珍妙なものではなかったはず IAEAの勧告などおっとり刀に業を煮やした末の末、もはや後塵、三行半の通牒だったわけである
 そりゃ民家に燃料棒や毒蛇を保有し、国内外の警告を無視、先送りしていたら、たとえ民間人でも「想定外で片付けるわけにはいかない」と怒られるだろーよ 血友病治療の権威が述べた弁明の骨子は、我々は製薬会社と医師と患者の安定したスクラムの保持に責任があった、だぞ なるほどそれが社会の仕組み、仕方ない、国民総懺悔で済ませるのかつうね 膨大なコスト? 静岡県知事によれば浜岡原発津波対策を実施することを約束したそうだ 原発事業そのものが成り立たぬ巨大プロジェクトを決裁した中部電力経営陣は、株主から見放されてしまうだろうね もんじゅ建造が九千億らしいから、防護壁や外部電源を高台に再設置するのに一兆ほど掛かるかしらん
 で、ふと思った 太平洋沿岸のある地点に7メートルが押し寄せる事態ではなく、福島原発敷地に押し寄せる高波、最高レベルの外部電源システムを含め一切を喪失させる浸水、その事象を指して「千年に一度」としているのではないかと 2011年3月11日に北陸で一人の赤ん坊が産まれる事前にはじき出す確率と、眠る女児を見やりながら、この子が誕生した確率を算出するのでは趣が異なる 後者のそれは「考慮、想定に値しない」とか「天文学的」といった修飾では役不足、その数値は「この宇宙に出現できない」ものとなるからだ 
 と、レムの架空書評を参照したのは、非常用電源の複数台故障という事態を巡っての「抽象的なことを言われた場合には, お答えのしようがありません」なる答弁がちゃんちゃら理解できないから トレードオフたら以前に、感情を排した冷徹なリスク評価なんて端から放棄していたのだ

 JCO事故の死者はなく、新聞もテレビもなく、高楼の操舵室、重役室がガラスを隔てた清掃員のゴンドラより危険な足場である世界に住む人々が集ったリンク先もあったが、もう時間がないので省略 1995年の地震ではPTSDによる死者、孤独死が、国民的抵抗もなく震災犠牲者として扱われ、その計数が口にされているが、今後は避難の混乱で圏内に置き去りにされ命を失くした者らを――たとえ注釈(関連死)をつけても――原発事故の死者数にカウントし貴重なデータに政治的ノイズを忍びこませる「サヨクの手口」といった言説がこの先席捲するのかもしれない


 最後にブクマ予定稿を二つ 時期を過ぎ、代替地も見つからなかったもの

 自民長期政権時代を懐かしく想うのは、「空母建ててもお釣りがくる思いやり貰って、オトモダチとか殊勝なこと言っといて、レントゲン検診が怖い、退散しますってそりゃ茶番ですわ」つう農水族辺りの失言ー腹芸を見せる議員がいてくれたかもってね。
 薔薇色のペンで書いて良い。人命、資産、信用を失し、長期に渉る負担、停滞を齎しても「総懺悔」「想定外」で免責される先達がついた。懸念は「中国へ行け」クリック隊が対応する。各位臆せず提言し、予算を掻っ攫ってきてほしい。

後に加筆、修正します、そりゃもう